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『KABURA』 鏡 閑

 旗川の桜と対峙した時、ぼんやりとした視野から想起されたものは、9年を経ても何者かに成り行く途上の自我でしかなく、その歩みは遅い。未だその光景は一様にしか見えていない。現在とは違った視野、思考を立ち上げたいと願う。
 ふと、幼き頃、ヒーローのお面をかぶって夢中になった「ごっこ遊び」の記憶が桜の並木を駆け回るのを感じた。ヒーローになった私は見栄をきる。得意の決めポーズ、いつもの決め台詞。幼き私が、瞬間的に超人になれたのだ。
 勇気をもって、葉の形をしたお面をつけた者は、自身の顔をなくしたことを桜に宣告さる。面をつけることで瞬間的に変わる視野、言語形式。約束ごととはいえ、そこには意識を変える一つの可能性が秘められている。
「KABURA」は、桜も私も合わせ鏡のように歌い、舞いながら遊び、意識を交歓している夢。やがて種を越えた何ものかに体現していくだろう。

 

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