SPACE-U

秘密の未言

 

河村 塔王展

 

2007年6月9日(土)〜6月23日(土)
12:00〜22:00

 

 

未だ生まれぬ未生の言葉。
未だ生まれぬ未生の物語。
無と無限を孕んだ0℃の言詞の孵化。

 


茶話会+ワークショップ
『器官無き身体の呟』


6月09日(土)・10日(日)・16(土)・17(日)・23日(土)
14:30より参加費500円(1ドリンク付)

 

オープニング・パーティ
6月09日(土)
18:00より参加費2000円(食事有)

 

 

 

【大いなる1】と[小さな1]    タカユキオバナ

DMから推しはかれることがある。いかなる経緯があったか知れぬが、〈秘密の未言〉と〈河村塔王〉が出会ってしまい、どちらからともなく発語したようだ。両者の「吹き出し」が一つに合体しているところから察すれば、何らかの意思の疎通があったように思われる。「吹き出し」内をあえて白紙にしたのは、ここで交わされた言葉が私達が普段使っている言葉ではなく、「未だ生まれぬ未生の言葉」を想像してほしいという河村の思惑が感じとれる。
思えば太古の微生物、昆虫、鳥獣の発声に始まり、現在の私達の日常会話にいたるまでに、どのくらいの声がこの界に発せられてきたのだろう。推しはかれぬほど世界は響きで満ちている。
発せられてしまったものはコントロール不能である。にもかかわらずコントロールしたいというのが、私達の自意識の現れかも知れない。響きを働きで括る意味の歴史、すなわち「言葉」をかなり強引に獲得してきたと思っているのだが。
「吹き出し」で括られる世界は、言葉を超え感情を含んでいる。本来見えぬものを象徴的な形で表す。この形でおおよそではあるが、驚いているのか、怒っているのか、ぼんやりしているのか、愛しんでいるのか、悲しんでいるのかなどのことが分かってしまうほどである。「吹き出し」が言語に迫る共通の認識にいたっているところからみても、戦後の日本社会において、漫画は、急速に普及したということだろう。
本展の河村は、【0】から【大いなる1】にいたる間に、無数の[小さな1]でひしめき合う様子を「吹き出し」の集合で表そうとしている。「未だ生まれぬ未生の言葉」を【大いなる1】とすれば「吹き出し」は、[小さな1]である。さまざまな意識体から発せられ続けている声、言葉、思念までも象徴的に表すことができる素材として「吹き出し」に目をつけたのであろう。「吹き出し」をギャラリーの壁面全体に配置している。本来括れないものをあえて括られたもので表す、こうすることで、いかに世界は響きで満ちあふれているのかが強調される。
自然呪という考えを持ち出すべきか。こういった充満している響きを無意識が捉え、気づかないうちにその影響下にあること、このことを私は自然呪とよんでいる。河村の考えている【大いなる1】にいたる中で生きていく[小さな1]である一人ひとりの生活者(意識体)が捉えていると思われる世界観の基底と響き合うコントロールされないままの言葉、おそらくは、私達が何かを発する時、その原始のインスピレーションと深く関わっているにちがいない。

ICU in WIREDは河村塔の実験小説研究所です。

http://www001.upp.so-net.ne.jp/toh-kawamura/

 

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